みなさん、さようなら/中村義洋 【DVDで鑑賞】
みなさん、さようなら/中村義洋
えがった。とっても、えがった。なんの予備知識もなく、なんとなく借りたDVDで鑑賞。勝手に、ホップな青春映画だと思っとりました。稀有な男の稀有な人生を面白おかしく描いた作品だと思っとりました。でも、もっと身近な作品でした。
映画序盤では、浜田岳演じる渡会悟はいわゆる変人で、映画の中だけで存在する”キャラクター”でした。しかし、中盤で悟くんが団地で生きることを決めたバックボーンが明かされたとき、悟くんは”楽しいキャラクター”から”悲しい人間”へと変わります。その瞬間、小生の心は鷲掴みにされ、ハッとしてグッと来たのです。
小生は、小さい物語が大好きです。この映画は、団地の中だけの人間関係で話が進みます。終わり方だって大団円ではありませんし、悟くんが少し前に進むだけです。でも、それで十分です。このサイズ感が、明日への活力となるのです。
これがハリウッド映画なら、きっと悟くんは早紀ちゃんと結婚するでしょうし、きっと悟くんの働くケーキ屋だって大繁盛、きっと最後は団地に人が溢れかえるでしょう。
そういうウェディングケーキ級のハッピーエンドもいいのですが、現実で自分が置かれている状況によっては胃もたれを起こしてしまいます。小生は偏屈な人間でありますので、あまりにも現実離れしたハッピーエンド迎えるとかえって気分が沈みます。かといって救いようのない終焉を向かえた時には、「おお、神よ。どうかお慈悲を」と祈りをささげ、その日一日海底奥深くで彷徨うことになるのです。
その点、この映画のハッピーエンドのサイズ感はちょうどよく、ホームランバー程度の幸せを残してくれます。もう少し欲しいと感じる幸せ。その”あともう少し”は、現実の生活の中で埋めてやろうと、明日への活力へとなるのです。甘さ控えめカロリーオフ。なんでもない日に見るには持って来いです。ジャンジャン。
最後に、僭越ながら勝手に採点。
星4つ。